自転車目線の解剖学講義-ハムストリング 平成26年6月12日(木)
自転車目線の解剖学講義-ハムストリング 平成26年6月12日(木)
本日の講師の先生をご紹介します。
イイトコ大学で「neurologist Dr.」の称号をお持ちの舞誉徐運先生です。
………
はい、では授業を始めます。
今日は、自転車乗りのみなさんが、とーーーっても好きな筋である「ハムストリング」のお話です。
パワー爆発で疲れやすい大腿四頭筋に対して、疲れない筋の代表格、無尽蔵のエネルギーを内蔵する、なんていわれている筋です。
①ハムストリングの基本
②踏み足のハムストリング
③引き足のハムストリング
④痙攣のハムストリング(足がつる)
【①ハムストリングの基本】
その位置。太ももの裏面(背面)です。
太ももの裏面には、膝を曲げる筋である「大腿二頭筋」「半膜様筋」「半腱様筋」があります。この3つをあわせて「ハムストリング・マッスルズ(Hamstring muscles)」と言い、ハムストリングと略されます。
じゃぁ、ハムストリングって、何をしてくれるのでしょうか?
筋肉の基本事項。
筋肉は「収縮する」ことによって仕事をします。
筋肉はひとつの関節をまたぐように骨に付着していて、筋肉の長さを短くすることによって、関節を動かします。体中のすべての筋肉は「短くなる」ことによって仕事をします。短くなる際に、太さが太くなるので「ちからこぶ」が発生します。
ということで、ハムストリングを見てみますが、
実は、ハムストリングはそんな単純な筋ではありません。
それぞれの筋が付着している骨に注意しましょう。
通常の筋は2つの骨に付着してるのに対し、ハムストリングは、
骨盤 - 大腿骨 - 脛骨(または腓骨)
の3ヶ所に付着しています。
これは2つの関節(股関節、膝)をまたいでいることになります。
つまり、ハムストリングは2つの関節を動かしえる筋ということになります。
ハムストリングの股関節部分が収縮すると、、、
太ももを後方へ引っ張る動きになります。サッカーのボールを蹴るときに足を引き上げるような動き、背泳ぎのキックの動きですが、自転車では角度を変えてみると「ペダルを踏む」運動になります。
(医学用語では「股関節の伸展」といいます)
一方、ハムストリングの膝関節部分が収縮すると、、、
単純に膝を曲げる運動です。ペダルを引きます。
(医学用語でも「膝関節の屈曲」といいます)
ハムストリング、すげぇ。
踏み足も、引き足もできるのか?!
しかも、疲れにくい筋なんて!
ハムストリング大王になれば、ヒルクライム大王になれるのか?!
…そんな単純なことが、世の中にあるわけない。
困ったことに、
『2つの関節に対して、同時に最大限の仕事を発揮することはできない』
のです。
どういうことかというと、
ハムストリングの股関節部分を縮めたいときには、膝関節部分はのばしておかないといけない。
膝関節部分を縮めたいときは、股関節部分が伸びていたほうがより大きな仕事ができるということなんです。
まだわからない人のために、説明は続く。
【②踏み足のハムストリング】
股関節部分のハムストリングが収縮すれば、太ももが振り下ろされて、ペダルを踏むことができますが、、、、
上記の理由で、
股関節部分のハムストリングに大きな力を発揮させるためには、膝関節部分は伸びている必要があります。
もちろん、膝をまっすぐに伸ばす必要はないけれど、「なるべく」伸ばしたほうが大きな力でハムストリングを収縮できるのです。
膝を「なるべく」伸ばした状態で踏み足???
そんなことができるのでしょうか?
そもそも膝を伸ばす筋は大腿四頭筋。大腿四頭筋を使ってしまっては、疲れないように、という工夫がもともこうもありません。
でも、ペダルは回る。地球は回る。自然に回ってます。
ペダルに身を任せ、膝関節が伸びたと感じた瞬間に、ハムストリング踏み足を炸裂させればよいのです。
意図的に膝を伸ばすのではなく、膝が伸びる位置に来るまで待ってればいい。
しかし、6時(下死点)で「伸びた!」と感じるようでは遅い。当然、もう踏めません。
3時や4時の点で「伸びた」と感じるようなセッティングと乗り方が必要となります。
それが、、すなわち、、
「くいこみ乗り」で「腰を立てて」「ポコニョーリを浮かせて」「やや後傾」
「サドルは当然高め」
こうすれば…
3時か4時あたりで、膝が伸びてて、でも踏み足ができる気がする!
少なくとも前傾姿勢では無理。やはり前傾ってのは全てにおいて間違いのようです。(あくまでも通常の巡航での話。)
で、この「くいこみ腰立てポコニョーリ」乗りをすると、必然的に、
→足が突っ張る、後方加重になる
→ハンドルを引くことになる
→らくだのこぶができる!
インチキ商法か?ってくらいにいろいろと解決。
Aさんの体験談、
『先日、仕事帰りにママチャリクロスで赤城のポエムコースを登ってみたんだよ。いつもは1本でもハーハー言わされちゃうんだけど、この「膝伸ばしハムストリング踏み足」で登ってみたら、全然疲れないんだよね。ホントに。
「ポエム」を3本やっても、まだ行けるぜ!って感じだったね。
10本くらい行けそうだったけど、飽きちゃったし、ゲーセンに行きたかったから3本でやめちゃったけどね。だって、WCCFが…以下省略』
注:あくまでも個人の意見です。
≪まとめ≫
膝関節がやや伸びた状態での踏み足は、ハムストリング。
そのためには、サドルを高くし、腰を立てて乗る。前傾禁止。
すると、ハンドルを引くことになり、自然にらくだのこぶができる。
踏み足のときにハムストリングを使っているかどうかは、簡単に確かめられます。おしりの付け根を触ってください。
踏み足ごとに、このへんに「ちからこぶ」ができていれば、十分にハムストリングを活動させている証拠です。
ペダルがどの位置にあるときにハムストリング踏み足になるのか?なるべきか?
それは初心者の私には、まだわからない。
現時点での私は、2時から4時の位置でハムストリングが活動しているようです。完全に膝が伸びきる6時の位置(下死点)では引き足(こね足)になってしまうからいけないような気がします。
長くなったので、今日はこのへんで終わりにしましょう。残りは次回に。。。
次回は、、あるの?
………
え?
称号「neurologist Dr.」って何?
日本語で言うと「神経学者」です。脳とか神経とか筋肉の働きを熟知した「偉い大先生」という意味ですね。
ま、称号なんてみなお金で買うものですけどね。
はい、高かったですよ。デュラエースなんて比べ物にならないくらい。
………
本日の講師の先生をご紹介します。
イイトコ大学で「neurologist Dr.」の称号をお持ちの舞誉徐運先生です。
………
はい、では授業を始めます。
今日は、自転車乗りのみなさんが、とーーーっても好きな筋である「ハムストリング」のお話です。
パワー爆発で疲れやすい大腿四頭筋に対して、疲れない筋の代表格、無尽蔵のエネルギーを内蔵する、なんていわれている筋です。
①ハムストリングの基本
②踏み足のハムストリング
③引き足のハムストリング
④痙攣のハムストリング(足がつる)
【①ハムストリングの基本】
その位置。太ももの裏面(背面)です。
太ももの裏面には、膝を曲げる筋である「大腿二頭筋」「半膜様筋」「半腱様筋」があります。この3つをあわせて「ハムストリング・マッスルズ(Hamstring muscles)」と言い、ハムストリングと略されます。
じゃぁ、ハムストリングって、何をしてくれるのでしょうか?
筋肉の基本事項。
筋肉は「収縮する」ことによって仕事をします。
筋肉はひとつの関節をまたぐように骨に付着していて、筋肉の長さを短くすることによって、関節を動かします。体中のすべての筋肉は「短くなる」ことによって仕事をします。短くなる際に、太さが太くなるので「ちからこぶ」が発生します。
ということで、ハムストリングを見てみますが、
実は、ハムストリングはそんな単純な筋ではありません。
それぞれの筋が付着している骨に注意しましょう。
通常の筋は2つの骨に付着してるのに対し、ハムストリングは、
骨盤 - 大腿骨 - 脛骨(または腓骨)
の3ヶ所に付着しています。
これは2つの関節(股関節、膝)をまたいでいることになります。
つまり、ハムストリングは2つの関節を動かしえる筋ということになります。
ハムストリングの股関節部分が収縮すると、、、
太ももを後方へ引っ張る動きになります。サッカーのボールを蹴るときに足を引き上げるような動き、背泳ぎのキックの動きですが、自転車では角度を変えてみると「ペダルを踏む」運動になります。
(医学用語では「股関節の伸展」といいます)
一方、ハムストリングの膝関節部分が収縮すると、、、
単純に膝を曲げる運動です。ペダルを引きます。
(医学用語でも「膝関節の屈曲」といいます)
ハムストリング、すげぇ。
踏み足も、引き足もできるのか?!
しかも、疲れにくい筋なんて!
ハムストリング大王になれば、ヒルクライム大王になれるのか?!
…そんな単純なことが、世の中にあるわけない。
困ったことに、
『2つの関節に対して、同時に最大限の仕事を発揮することはできない』
のです。
どういうことかというと、
ハムストリングの股関節部分を縮めたいときには、膝関節部分はのばしておかないといけない。
膝関節部分を縮めたいときは、股関節部分が伸びていたほうがより大きな仕事ができるということなんです。
まだわからない人のために、説明は続く。
【②踏み足のハムストリング】
股関節部分のハムストリングが収縮すれば、太ももが振り下ろされて、ペダルを踏むことができますが、、、、
上記の理由で、
股関節部分のハムストリングに大きな力を発揮させるためには、膝関節部分は伸びている必要があります。
もちろん、膝をまっすぐに伸ばす必要はないけれど、「なるべく」伸ばしたほうが大きな力でハムストリングを収縮できるのです。
膝を「なるべく」伸ばした状態で踏み足???
そんなことができるのでしょうか?
そもそも膝を伸ばす筋は大腿四頭筋。大腿四頭筋を使ってしまっては、疲れないように、という工夫がもともこうもありません。
でも、ペダルは回る。地球は回る。自然に回ってます。
ペダルに身を任せ、膝関節が伸びたと感じた瞬間に、ハムストリング踏み足を炸裂させればよいのです。
意図的に膝を伸ばすのではなく、膝が伸びる位置に来るまで待ってればいい。
しかし、6時(下死点)で「伸びた!」と感じるようでは遅い。当然、もう踏めません。
3時や4時の点で「伸びた」と感じるようなセッティングと乗り方が必要となります。
それが、、すなわち、、
「くいこみ乗り」で「腰を立てて」「ポコニョーリを浮かせて」「やや後傾」
「サドルは当然高め」
こうすれば…
3時か4時あたりで、膝が伸びてて、でも踏み足ができる気がする!
少なくとも前傾姿勢では無理。やはり前傾ってのは全てにおいて間違いのようです。(あくまでも通常の巡航での話。)
で、この「くいこみ腰立てポコニョーリ」乗りをすると、必然的に、
→足が突っ張る、後方加重になる
→ハンドルを引くことになる
→らくだのこぶができる!
インチキ商法か?ってくらいにいろいろと解決。
Aさんの体験談、
『先日、仕事帰りにママチャリクロスで赤城のポエムコースを登ってみたんだよ。いつもは1本でもハーハー言わされちゃうんだけど、この「膝伸ばしハムストリング踏み足」で登ってみたら、全然疲れないんだよね。ホントに。
「ポエム」を3本やっても、まだ行けるぜ!って感じだったね。
10本くらい行けそうだったけど、飽きちゃったし、ゲーセンに行きたかったから3本でやめちゃったけどね。だって、WCCFが…以下省略』
注:あくまでも個人の意見です。
≪まとめ≫
膝関節がやや伸びた状態での踏み足は、ハムストリング。
そのためには、サドルを高くし、腰を立てて乗る。前傾禁止。
すると、ハンドルを引くことになり、自然にらくだのこぶができる。
踏み足のときにハムストリングを使っているかどうかは、簡単に確かめられます。おしりの付け根を触ってください。
踏み足ごとに、このへんに「ちからこぶ」ができていれば、十分にハムストリングを活動させている証拠です。
ペダルがどの位置にあるときにハムストリング踏み足になるのか?なるべきか?
それは初心者の私には、まだわからない。
現時点での私は、2時から4時の位置でハムストリングが活動しているようです。完全に膝が伸びきる6時の位置(下死点)では引き足(こね足)になってしまうからいけないような気がします。
長くなったので、今日はこのへんで終わりにしましょう。残りは次回に。。。
次回は、、あるの?
………
え?
称号「neurologist Dr.」って何?
日本語で言うと「神経学者」です。脳とか神経とか筋肉の働きを熟知した「偉い大先生」という意味ですね。
ま、称号なんてみなお金で買うものですけどね。
はい、高かったですよ。デュラエースなんて比べ物にならないくらい。
………
by akogarehotel | 2014-06-13 18:12 | 本気のサイクリング | Comments(2)
Commented
by
タカノ
at 2015-04-01 09:23
x
股関節の伸展は大臀筋を使った方が合理的ではないでしょうか?
ハムスタースピン、福田さんの投稿も参考になるので、よろしければご覧ください。
https://m.facebook.com/HamsterSpin/photos/a.707463949373984.1073741828.328366047283778/707464599373919/?type=1&source=48
ハムスタースピン、福田さんの投稿も参考になるので、よろしければご覧ください。
https://m.facebook.com/HamsterSpin/photos/a.707463949373984.1073741828.328366047283778/707464599373919/?type=1&source=48
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by
akogarehotel at 2015-04-01 12:13
タカノさん
貴重なコメントをありがとうございます。
(私はロードバイクを初めて2年目の初心者ですが、)
ハムストリングを使えと言われて走っていたのですが、なんだかそうすると疲労がたまるような気がしていたのです。
どこかに無理がかかって(大腿四頭筋を使ってしまってい)るのか、ハムストリングそのものも疲労するのか、と考えていました。
臀筋群を使う方が、長距離を走るのには適しているのかもしれないですね。
と簡単に使い分けができるつもりもないのですが…
貴重なコメントをありがとうございます。
(私はロードバイクを初めて2年目の初心者ですが、)
ハムストリングを使えと言われて走っていたのですが、なんだかそうすると疲労がたまるような気がしていたのです。
どこかに無理がかかって(大腿四頭筋を使ってしまってい)るのか、ハムストリングそのものも疲労するのか、と考えていました。
臀筋群を使う方が、長距離を走るのには適しているのかもしれないですね。
と簡単に使い分けができるつもりもないのですが…