2073. Iか、Sか、どっち? 平成29年9月22日(金)
Iか、Sか、どっち? 平成29年9月22日(金)
(前回の文章は大学水泳部から依頼された作文。でも長すぎてボツ。文章を短くして採用されたのが今回のもの。)
水泳を知らない人のなめに:
クロールを泳ぐときに、水中で「I」を描くように手を動かすのがよいか、それとも「S」字がよいのか。たまに議論になることがあります。
★★★
IとSの、どっち?
スマホばっかり使ってるから、「どっち?」なんていうデジタルな脳みそになるんだよ。医学部生なら、もっと柔軟に考えようよ。
もちろん、ストロークの話。
そして、もちろん、僕の個人的な考え。
水中で「I」を描くのがよいのか、「S」のほうがよいのか。
たぶん、答えは生理学の教科書にあると思う。
【骨格筋】
① 白筋
いわゆる「速筋(そっきん)」。瞬発力を発揮する筋。
イメージは白身魚。敵から一瞬にして逃げるため、まさに命懸けの瞬発力。
ヒトの骨格筋では、上腕二頭筋や前腕の筋群などの「遠位筋」に多く存在する。スポーツ界では大腿四頭筋も「遠位筋・速筋」とみなされることが多い。「速さ」を生み出してくれるかわりに、すぐに疲れる。
鍛えればモリモリと盛り上がるが、練習を怠るとしょんぼりと退化する。
② 赤筋
「遅筋(おそきん)」。持久力を備える筋。
遠洋マグロは、太平洋を何周しても疲れない真っ赤なお刺身。
ヒトでは近位筋。巷で言われる体幹筋がこれ。広背筋や腸腰筋など。
瞬間的な仕事量は少ないが、永久機関のように延々と動き続けてくれる。
練習で鍛えても、すぐには育たない。
では水泳にあてはめよう。
①短距離を泳ぐ場合、
スピード重視の遠位筋を使う。すなわち、肘、前腕、手首を意識したストローク。下敷きみたいなパドルを想像すればよい。そんなもの付けたら、手首をしっかり曲げて、手のひらと前腕でまっすぐかき出さないと進まないでしょう。
すると、、、、自然と「I」になってないか?
さらに、
短距離なんだから多少のエネルギーロスは無視して、がむしゃらに回転数を稼ごう。直線的にかくほうが効率いいよね。当然、I字になる。
一方、
②長距離を泳ぐ場合、
スタミナ重視の近位筋を使う。肘と肩関節を意識する。
手を「グー」にして泳いでみよう。上腕と脇の下で水をかかないと進んでくれない。当然、体もローリングが必要になってくる。
ほら、「S」字になるでしょ。
ということで、論点は、
「I」にするか?「S」にするか?
ではなく、
「I」になるか、「S」になるか。
目的にあった正しい筋肉を使えば、自然と正しい形になってくる。
形が間違っているのは、正しい筋肉を使っていない証拠です。
ただし、近年のスポーツレベルはヒトの進化を飛び越えています。
世界レベルでは、たとえ1500mであっても、スピード重視のまま泳ぎきってしまうようです。自分のレベルと合わせて、「I」なのか「S」なのかを考えてください。
じゃぁ、その速筋を鍛えるにはどうしたらいい?遅筋を鍛える練習方法は?
それは、みなさんのメニュー係に聞いてください。
(紙面の都合で、今回はここまで。)
もしも、僕が現役時代に、このことを考えて練習を組んでいたら、部の成績がもっと良かっただろうに。。。。当時の皆様、ごめんなさい。
by akogarehotel | 2017-09-22 18:06 | ただの日常日記 | Comments(2)