12歳の重圧(4) 令2年12月10日(木)#2305
12歳の重圧(4) 令2年12月10日(木)
【5】考えるようになったワケ
僕は医者よりも、家庭教師を本業と自負しているので、理解できない子供に理解させるのが仕事だ。
しかし、今回の生徒には本当にてこずった。
昨日教えたことを翌日忘れていても、
『私は、3歩あるくとわすれちゃうの』
と、ニワトリみたいにけろっとしている。
そこを強く言って、無理矢理覚えさせると、むしろパニックになり試合にならない。
そんな生徒には、ドラえもんの秘密道具を使うしかない。
「カード式ノート」!!
最低限の項目を自分でカードに書かせる。それをファイルして、毎日1回ながめさせる。
内容は覚えなくていい。眺めるだけでいい。見出しだけ頭に入れてくれればいい。
試合前や試合中に不安になることがあったら、ノートの見出しを頼りに、そのとき初めて、内容を確認してくれればいい。
大事なのは、「わからないことがあったら、あそこに書いてあったはず」という安心感。これで、不安からくる「糸の切れ」を抑制することができる。
もちろん、本当は内容を暗記してほしい。
最低限のことは暗記してほしい。
このようなカード式にすれば、暗記能力を最大限に引き出すことができる、というのが受験業界の常識。
………
そんな「カード」の内容は、
☆左利き対策 サーブ
☆左利き対策 つっつき
などの基本手技のほかに、
☆もしも、Iさんに負けそうになったら①~③
☆もしも、3球めが入らないときは、
☆今ここでどうしても1点ほしいとき
☆流れをかえたいとき
などなど
………
子供(選手)は、試合中に何かを考えるようにすれば、考えることが忙しくて、緊張する暇がなくなる。
緊張しなければ、糸は切れない。
無心が賞賛されるスポーツもあるけど、卓球は頭を使って考え抜く競技だと思う。
………
あっという間に3週間がすぎた。
6項目の再確認。
①緊張の糸を切らない ← ベンチコーチがひたすらなだめすかして、安心させること。秘密道具「ノート」を活用。
②指示を忘れてしまう ← 試合前、試合中にカードを見直す。
③めがね ← 日常もずっとつけっぱなし。
④ラバー ← 新しいラバーをカイロで温めておく。
⑤寒さ対策 ← カイロ、お茶。(幸運にも、体育館は暖房あり)
⑥左利き対策 ← カードが10枚以上。最低限の1枚は「サーブ」。これだけは暗記してくれ。
………
試合前日、早く寝て体力温存。
当日、朝6時に起きて、長男と朝練。
絶好調の長女は、ラリーで長男に打ち勝つことがたびたび。
長男はこの日、一日中練習(午前試合、午後練習)があるのに、長女の朝練に付き合ってくれた。頼りになるおにいちゃんです。
試合会場へ向かう車の中、ヘッドホンで音楽を聴き、精神集中している長女。
競走馬のような気性と、にわとりの脳みそで、寒い日には冬眠中の熊になってしまう長女だが、この日、少なくとも外見だけはアスリートだった。
8時半、高崎浜川体育館に到着した。
☆☆☆
【6】敵が強く見えてしまう理由
戦国時代によくある話
「草むらから飛びたった鳥の音を聞いて、大群が攻めてきたと勘違いし、あわてて退却してしまう」
こんな勘違いをしてしまう理由は、
自信がなくて不安だから
相手を知らないから
練習が足りないから
………
トーナメント式なら、もしかしてIさんと対戦しなくても済むんだけどな、
なんて自己中心的な考えでプログラムを開いてみた。
予選リーグは4人で1位のみ通過。
決勝も4人リーグの総当り。
世の中、そんなに甘くなかった。
以前、
『負けるかもと思ったら、負けだよ』
とつぶやいて、親をびっくりさせたことがある長女だが、この日は様子がちがった。
プログラムを見て、ぼそっと言った。
『この子、やばいかも(負けるかも)』
その子は樹徳のTさん。僕は女子選手には詳しくないので、名前は知らないが、長女が「やばい」というのだから「強い」のだろう。樹徳だから、選手が大化けしても不思議はない。
ほかのリーグには、「シュエット」というチーム名がある。
シュエットとは埼玉の名門チームで、「マエタク」と同じく、”ここのメンバーは全員強い”という枕詞。
太田のIさんのリーグには、なんと高崎のTさんが一緒に入れられている。
去年の小学生総体の2位と3位だ。
予選リーグは、どこもそう簡単な状況ではない。
………
予選リーグ。
長女が「やばい」と言った樹徳のTさんをじっくり偵察した。メモを取りながら、サーブレシーブを本気で分析。
巻き込み気味に繰り出す下横回転のサーブを、相手が突っついて、浮いて返ってきた球をスマッシュする。これが得点パターン。ドライブは少ないし、たまにサーブミスするのが欠点のようだが、スマッシュは間違いなく武器になる。
ということは、相手の下横サーブを、バックハンドまたはドライブで返せばいい。
スマッシュを打たさなければいい。
「できる?」と長女に聞くと、
『やってみる』と。
Tさんとの試合が始まった。
ここまで二人とも2勝。勝ったほうが予選を通過する。
Tさんのサーブで始まる。
得意の下横回転が来る。それを長女がバックハンドで打ち返した。
レシーブエース。
ほっと一息。そして、長女の技術に感嘆した。
Tさんは「うまい」と言われて当然の選手だが、得意技を封じられたら仕方ない。
なんとかそのまま勝つことができた。
もうっ!予選から緊張させないでくれよ!
………
ほかの予選リーグの偵察もしないといけないので、午前中は忙しい。
シュエットのNさん対太田のKさん
予選なのに、会場中が注目する見ごたえある試合は、ギリギリで太田のKさんの勝ち。
うちの長女は初物に弱いので、もしシュエットのNさんと対戦していたら勝ててなかっただろう。そのNさんに勝ったKさんは、去年の小学生総体3位だが、ひょっとしたら今年は優勝するのではないか、と本気で思った。
つまり、うちの子はKさんに負けるかも…
太田のIさんと高崎のTさんの去年の2位3位のつぶしあいは、予選第一試合で行われた。朝一では、お互いに万全の調子ではなくかわいそうだ。
Tさんが先に1セット取ったが、その後逆転され、太田のIさんが勝利した。
予選を通過したのは、太田のKさん(左利き)、太田のIさん(左利き)、樹徳のTさん(上記とは別リーグのカットマン)、と長女の4人。
決勝は午後から4人総当りで行われる。
………
お昼休み。
秀卓会の友達と、お昼ご飯と「休憩」。
小5部門の予選を通過した友達と、公園を走り回ったり、なわとびしてる。
この友達どうしの休憩時間はとても貴重。一度、糸を緩めておける。一日中、緊張しっぱなしは、小学生には無理。(大学生には可能。)
とりあえず、ノートだけは見直しておけよ。
だって、午後の最初の相手は、太田のIさんなんだから。
by akogarehotel | 2020-12-10 12:25 | 子育てられ | Comments(0)