2018年 04月 11日 ( 1 )

 

2148. 一応「旅行記」または「医療ブログ」 ”法医学教室の午前午後” 平成30年4月

一応「旅行記」または「医療ブログ」 法医学教室の午前午後 平成30年4月



1995年から1998年までの3年間、福井県で生活した。

福井での生活そのものが、旅行みたいなものだった。

流れで、そのころのことを。



………



大学を卒業して、都内一等地にある、いわゆる花形の大学病院(内科)に勤めていた。

政治家やスポーツ選手が来たりする。「お礼」が月給を越えることもあった。


しかし、さすがに朝7時から夜10時の、年間350日勤務には飽きてきた。

結婚して子供を育てている先輩や同級生を見ていて、

「お前ら、そんなんでいいの?」と思った。


で、かねてから考えていた、法医学への転向を決心。

もともと法医学には興味があり、助教授先生が名門前橋高校出身ということもあって、学生時代からいろいろと見学をさせてもらっていた。殺人事件の解剖なども立ち会ったことがある。うちの大学は新宿区が管轄なので、その頃、年間50例くらいの司法解剖(刑事事件に関する解剖)があった。


しかし、大学内での内科から法医学への異動は諸方面から、いい顔をされない。助教授先生も今は北里大学へ教授として転勤してしまった。

仕方ないので、地元の群馬大学に相談に行ったところ、群馬大学の教授先生が申し訳なさそうに、

 「群馬は無理だけど、福井県なら「空き」がある」と。


勤務先なんて、日本だろうが、海外だろうがどこでもいい。

というか、競輪のある街!

不満などあろうはずがない。喜んで即諾。



………



その昔、昭和初期、国鉄総裁の死体が見つかった事件。

事件(他殺)なのか、事故(自殺)なのか、全くわからない。(結果的に迷宮)

このとき、東京大学法医学教室と、慶応大学法医学教室とで、意見が正反対にわかれ、(どっちがどっちか忘れたけど、)そのまま、不仲な対立関係にあると言われています。

実際、喧嘩するわけじゃないし、単に「ライバル視」しているだけ、というのが正解かもしれませんが。でも、お互いに研究方向がバラバラです。



極端に分類すると、

慶応大学法医学は、死体解剖業務が主流。

東京大学法医学は、個人識別、遺伝子検査などをメインとしている。

1990年のこと。しかも、非常に簡潔すぎる表現。語弊あると思います。)


で、当然のこととして、ほかの大学も、慶応系と東大系とに別れる。

たとえば、北里大学はガチガチの慶応系。

(もちろん、亜種あります。語弊あると思います。)



当時、群馬大学は遺伝子判別を主流としていた、いわば東大系。

群馬大学の仲の良い大学として、東大以外には、筑波大学、富山大学、そして福井大学。

群馬大学の教授先生が、数年前まで福井大学に勤務していたこともあり、


 群馬-福井-富山-筑波


は、かなり堅固なラインなんです。

富山競輪でもいいなぁ。筑波だったら、断っていたかも…



………



福井医科大学は、福井県の、さらに田舎町の丸岡町および松岡町にある。

そう、あの市田の出身地。


福井市街から車で30分の、何もない山と田んぼの中に、突然建てられた新設大学。当時、できあがって、まだ10年めくらい。大学の周囲には、やっとハイツなどの学生用住居が建ち始め、食堂がちらほらと存在していただけ。スーパーは2軒。

それでも最低限の生活はできるので、学生も職員も、学校周辺に住み、特別な休日のみ、「街へお出かけ」する。

冬になると雪のため、1ヶ月くらい大学以外に外出しないなんてこともありえる。


国立大学なので住んでいたのは、公務員宿舎。

建物はおんぼろだけど、3LDKで、月1万だったか。独身には広すぎる。



………



内科医の仕事が、診療と、医学的研究であるのにに対し、

法医学の仕事は、警察から依頼される仕事と、法医学的研究。

警察からの依頼は、大きくわけて2つ。死体解剖と、証拠鑑定。

鑑定は、たとえば、血痕からのDNA抽出と、それを基にした個人識別。

ただし、これらは方法さえ分かれば、誰でもできる。当時から、警察の鑑識課でも行っていたが、殺人事件のような重要案件は法医学教室に依頼される。


また、警察とは別に、裁判所から親子鑑定が依頼されることもある。父親らしき人と、子供らしき人が別々にやって来て、DNAなどで鑑定する。数十万の金額がふっかけられているらしいが、実際は、設備さえあれば、1万程度で可能。



解剖にも2種類ある。刑事裁判となっている「司法解剖」と、裁判にはなっていない「行政解剖」。

殺人事件の死体が司法解剖。病死または病死の疑いが行政解剖。


山菜を取りに行くと、山菜以外に死体を見つけることがあるが、そんなとき見つかった死体は行政解剖。北朝鮮から流れついた死体も行政解剖。(あくまでも、通常の話。)

交通事故は業務上過失致死の可能性があるので司法解剖。


司法解剖は緊張するが、行政解剖はそうでもない。(オフレコ)

新宿を管轄する都内大学病院なら、年間50くらいの司法解剖があるのに対し、平和な福井県では、年間1~2件。本当に平和だねぇ。



当然、質問されるのが、

 『テレビのように、法医学者が事件を解決することはあるの?』



あるわけないじゃん!


僕の知っている全ての司法解剖は、解剖の時点で容疑者が特定されていた。

すでに自供が取れていて、その供述と矛盾しないかどうかを解剖で確認する、というのがほとんどのパターンだった。


司法解剖で、法医学者が捜査のヒントを見つけるなんてことは、、、、?


そんなことがあるってことは、よほど警察が無能ってことだよ。

日本警察をなめるなよ!だと思うけどね。



警察を褒めた流れのついでで、

警察ってものは、本当に、嗅覚に優れている。


クロかシロかの判別能力もそうだけど、

相手に尻尾をふるべきか、威圧するべきか

の判断が素晴らしい。



基本的に、法医学教室は各県に1つしかない。福井県の事件事故は全て福井大学に依頼されるが、もしも、教室が拒否したら?堂々と拒否はしないけど、多忙を理由に冷たくされたら?


【結論】 警察は、法医学教室には絶対に頭が上がらない。

ということで、福井にいても、群馬に戻ってきても、手厚くちやほやしてもらいました。でも、彼らはお金を持ってるわけではないので、では、何をちやほやされたかというと … ピー … 。



………



解剖の話に戻ります。


ご存知のように、福井県には、東尋坊という自殺の名所があります。

でも、東尋坊の海面に死体が浮いたからといって、それが必ずしも自殺と言い切れるわけではない。他殺の可能性もある。判断に迷ったら、解剖へ送られる。


「どざえもん」とは、想像上の人物で、身長2m近く、体格もプロレスラーのように、ごつくて力持ちの男だそうです。

人間の死体は海に落ちると、皮膚の中の細菌がガスを発生し、皮膚がどんどんとふくれてきます。それらが浮き輪の役目となり、一度沈んでしまった遺体も、時間がたつとともにだんだんと浮き上がってくるのです。そのときに、体中が膨れ上がっているので、「どざえもん」と言います。人間の遺体は、コンクリートでもぶらさげない限り、浮き上がってしまうんです。


東尋坊から運ばれてくる遺体は、当然、「どざえもん」ばかり。

最初のうちは驚いたけど、ずぐに見慣れた。

また、当時、北朝鮮の軍服を着た「どざえもん」が何人も流れ着いた。ニュースにもなった。最初のうちは、こまめに解剖してたけど、3例目くらいから解剖は省略するようになった。誰の得にもならないからね。



「どざえもん」の解剖は非常に手間がかかる。

その理由が、海中での溺死の証明。


海中で溺死した場合、当然、海水を肺へ吸い込む。だから、肺を解剖して、壊機法という処理をすると、肺のなかから「海水性プランクトン」が検出される。もしも、「海水性」ではなく、「川水性」または「水道水性」だったら?

それって偽装?ということで、この壊機法は溺死体には必須の処理。

しかし、これが半日以上かかる。

ドラフトに付きっ切りで、半日。。。。


溺死体が上がると、法医学者の仕事が増えます。

どうか、海に飛び込まないでください。



………



公務員なんだから、仕事が増えても文句を言うな、というのが正論です。

が、解剖関係の仕事が少なければ、研究関係の仕事に集中できます。



研究仕事とは、たとえば、

血痕からの遺伝子解析を確実に行う方法の研究、とか、

遺体のDNAの損傷具合から死後経過時間を推測する、とか、

親子鑑定を完璧に行う計算方法の研究、とか、

タイヤ痕から、車の重さを計算する方法、とか、


あちこちの法医学教室では、世の中のためになりそうなことを、いろいろとやってるわけです。


僕のように、医学が好きではないけれど、数学と物理と化学が大好きで、たまたま医学部に入ってしまったような人間には、ピッタリの仕事ですね。



………



仕事には、もう1つ大事なものがあった!


大学なので、学生に授業をする。

もともとが塾の先生になりたかったので、これが楽しくないわけがない。


法医学の実習では、「採血」という項目があり、これを指導するのは僕の仕事。学生にとっては、人生で初めての採血になる。毎年、緊張はするけど、楽しいイベントでした。



ただし、気になったのは出席管理。

授業開始直後に出席を取り、1分たりとも遅れたら「遅刻」。出席回数が足りないと、期末試験の結果に関係なく留年。

これは大学の方針で、群馬大学も同じという。

これじゃ、学生の頭が悪くなっちゃうよ。



(前にも書いた気がしますが)

僕の通った大学では、出席は取らない。

学生は、聞きたい授業だけ出席する。つまらない授業には行かない。結果的に、出席者2人なんて授業も多々ある。(1学年は100人)


そしたら、教える側も考えるでしょ?

ラリホーみたいな授業やってるくせに、全員出席しろなんて、

どっちが頭悪いんだろうね。



★★★



国立大学の医師は公務員です。

公務員だから、基本的に日曜日は休みになります。

事件が起きれば、日曜日でも呼び出されますが、福井県のような平和な街では、3年間で一度も呼ばれませんでした。


一方、給料も公務員と同じ。医師加算があるけれど、金融庁の方々よりは多くはありません。バイト診療(なぜか許されていた)をがんばっても、40なんて届かない。だからこそ、3LDKで1万なんですが。

ということで、東京にいた頃とは違って、お金はないけど、時間がある。



何する?

まずは、水泳。


 1)とりあえず、どこでもいいからスイミングスクールに入る。

 2)試合に出る。

 3)その試合で強い人を探す。(→タカギさん、キノシタくん)

 4)その人のいるチームに入れてもらう。(→ピアスポーツ)


僕が福井に行って、約1年後にタカギさんと知り合い、

その後、ひたすら一緒に泳ぎ、ついには水球チームを作ってしまた。タカギさんような人には、黙っていても周りから人が集まってくるので、おかげでニシノさん、ミズモト君、フクシマ君とも知り合いになれた。そして、先日は、ニシノさんの紹介で、野原哲也さん(福井51期)に会ってきたのだから、


 人の縁って、大事だよ。


タカギさんのほうが年上なので失礼かもしれないけど、僕にとっては生涯の友です。


仕事に余暇があると、プライベートが充実するという話。



………



水泳以外?

自転車にも乗ったけど、その頃は、パンクの修理もできなかったので、あまり遠出はしていない。もったいない。



スキー?

死ぬほど滑った。

官舎から、車で1時間の距離に白峰スキー場があった。(今は閉鎖)

シーズン券を買おうか悩んだくらい通った。

白山には2時間で行ける。当時、24時までナイターをやってた時代だったので、何度も真夜中に遊びに行った。



競輪と競馬?

これは大問題。

公営ギャンブル4種が全てそろっている群馬県民。

福井にも、競輪と競艇があり、県民がギャンブルを嫌いであるはずがない。


ところが、、テレビ、ラジオの放送が皆無。

そもそも、NHK以外に民放が2社しかなく(当時)、競馬放送はない。通常のラジオの電波も入らない。唯一、ラジオ短波が、ギリギリの雑音で聴取できた。しかし、馬券は買えない。

こんな不便な土地があるのかと怒ったくらい。


しかし、ちょうどその頃から、衛星放送が始まった。即、スカパーを接続した。

グリーンチャンネル(競馬)とともに、スピードチャンネル(競輪)を契約した。


そんな堕落的なものを手に入れてしまったら、当然の結果、一日じゅう、スピードチャンネル(競輪)見まくりの日々。

その日の全レースを夜の放送で確認する。結果だけでなく、レース映像を全て見る。S級だけではなく、A級、B級もしっかりと見るので、ものすごい知識量になった。


その当時、鳴り物入りでデビューしたのが、福井76期の市田佳寿浩。

ひたすらテレビで追いかけてた。


ただし、車券を買うのは不便。

ネット投票が開始されたけど、「審査」があり、申し込んでも当選する確率が50%くらい。当時は、そんな殿様商売だった。今では考えられない。


一向に審査に当選しないので、車券は現場へ行って買うしかない。

福井競輪場までは大学宿舎から、車で30分。

遠いな、でも、日曜日のたびに通ってたし、G1のときは、平日でも、朝7時に家を出て競輪場へ行って、車券を買って、朝8時に帰ってくる。それから仕事へ歩いていく。

大学の隣に住んでいる意味がないじゃん!



福井以外の競輪場にもあちこち「旅行」した。

富山には、ビー君が住んでいたので、何度も遊びに行った。

岐阜と大垣も、福井からわざわざ足を運んだ。

鹿児島で学会があったときに、小倉(ドームになる前)に寄った。

長崎で学会があったときに、武雄温泉に行った。

徳島に出張したときに、小松島にも行った。

学会=ゲーセン、ではなく、学会=競輪 という時代だった。



★★★



最後は、法医学の話で、


全国には医科大学が50あるのに、当時、法医学者は50人いなかった。

つまり、法医学に入れば、もれなく教授になれた。

まじめに順番を待ってれば、いつかは教授になれた。


医学よりも、数学や理科が好きなら、そうすればよかったのかもしれない。

でも、結婚して子供を育てることや、その他もろもろのしがらみを考慮して、


福井、つまり、法医学は、3年間で終了。

群馬、つまり、内科に戻ってきた。




次は、新婚旅行の話が。







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by akogarehotel | 2018-04-11 13:10 | 放射能と医療の真面目な話 | Comments(2)